複雑系アプローチとは

複雑系アプローチ

Complex Systems Approach

指標をひとつずつ見るのではなく、指標どうしの関係性そのものを分析の単位に置く考え方です。

単一指標では見えないもの

単一指標を見る場合と、指標どうしの関係を見る場合の対比 左は1本の折れ線だけを見ている状態で、すべて基準の範囲内に収まっている。右は5つの指標が線でつながったネットワーク図で、複数の要因が重なった箇所が危険域として示されている。 1本の指標だけを見る 指標どうしの関係を見る 基準の上限 すべて基準内 負荷疲労 睡眠日程既往歴 重なると危険域

単独では基準内の要因も、重なり方次第で危険域に達します。

なぜサッカーは複雑系なのか

複数の要因が同時に作用する

選手の状態は、負荷・睡眠・日程・既往歴などが同時に働いて決まります。

同じ入力でも反応が違う

同じ練習をしても、疲労がどこにどれだけ出るかは選手ごとに違います。

単純な足し算にならない

要因どうしが影響し合うため、個々の数値を足しても全体は説明できません。

Odonataの分析方法

分析の3ステップ 集める、関係を測る、状態を読む、の3つの段階が矢印でつながった図。 010203 集める関係を測る状態を読む 複数の指標を横断して集める 指標どうしの関係の強さを推定する その選手固有のパターンとして解釈する

複雑系の考え方について、もう少し詳しく

複雑系の考え方について、もう少し詳しく

複雑系とは、多数の要素が相互作用することで、要素単独にはない性質が全体として立ち現れるシステムのこと。鍵となる性質が「創発」と「非線形性」です。

Emergence創発

部分にはないものが、全体から生まれる

ニューロン1つに「意識」はありません。しかし無数のニューロンがつながり合った脳全体からは、意識が生まれます。全体は、部分の性質からは予測できない。

サッカーでは スター選手を11人集めても、最強のチームにはならない。チームの強さは選手個々の能力ではなく、選手間のつながり方から生まれます。
Nonlinearity非線形性

小さな変化が、大きな違いを生む

わずかな海水温の変化が、地球規模の気象を一変させることがあります。入力と出力は比例せず、閾値を超えた瞬間に、系全体が別のふるまいを始める。

サッカーでは 日々のわずかな疲労の蓄積が、ある日突然怪我として現れる。1人の配置の変化が、チーム全体の機能を一変させる。
More is different.
「多いことは、違うことだ」— P. W. Anderson(物理学者・ノーベル賞受賞)、1972年。複雑系科学の出発点となった言葉です
複雑性を避けていては、何も向上することはできない。
— フランシスコ・セイルーロ(元FCバルセロナ フィジカルコーチ)

この視点は、私たちの発明ではありません。

サッカーを複雑系として捉える見方は、スポーツ科学の研究とトップレベルの現場の、世界的な潮流です。

Ecological Dynamics

選手を環境から切り離さず、選手と環境の相互作用を単位としてスキル獲得や戦術行動を捉える理論的枠組み。トレーニング設計の国際的な潮流になっています。※1

創発的パターン形成の研究

チームを「超個体」として捉え、選手間の同期・協調から生まれる集団構造をネットワークや力学系の手法で定量化する研究が進んでいます。※2

ポジショナルプレー

現代戦術の焦点は「個の配置」から「関係性の設計」へ。位置的優位も数的優位も、選手どうし・相手との関係の中でしか生まれません。

※1 K. Davids、D. Araújo らを中心に発展した運動学習・スキル獲得の理論的枠組み(Ecological Dynamics)。

※2 例: Duarte, R. ほか (2012) “Sports teams as superorganisms” など、チームスポーツの集団行動に関する一連の研究。

まずは、チームのデータの状況からお聞かせください。

複雑系アプローチの詳細と分析事例をまとめた資料をご用意しています。